Mixed Roots Japan ミックスルーツ・ジャパン
多文化市民と歩む:「共生文化」の日本モデル構築に向けて
10月27・28日 大阪大学GLOCOL「足もとの国際化連続セミナー」:ミックスルーツ・アカデミックフォーラム2012

 

発表概要・アブストラクト

3)「スペイン語圏の国々にルーツを持つ子どものアイデンティティ研究序説」
  ディスネル・グタラ、関西外国語大学 講師 


本研究は、スペイン語圏にルーツを持っている在日外国人の母語とアイデンティティの関係について扱う。
 心理学の用語として使われ始めた「アイデンティティ」という言葉が様々な分野で使われるようになった現在、きわめて多様な意味で使用されている。
本稿では、「アイデンティティ」は、通常のように「エスニシティ」とか「ナショナリズム」とは異なる意味合いで用いる。アイデンティティは様々な要素によって構築されるのだが、それは「自己」だけで完結するものではない。他者からの影響を受けてこそ、人は自己の再確認ができる。また、「アイデンティティ」が他者によって押し付けられるという場合もある。
 一方、現代社会の中で生きる私たちの生活スタイルも多様化され、ますます「自己」の追求をする者も少なくない。特に影響を受けやすい年齢にある学齢期の子どもである。
 アイデンティティに関する従来の研究では、エスニシティが取り挙げられるのが主流であった。または、母語の習得度合いがアイデンティティの確立に直接的関係するという説もある。しかし、本稿では、母語とアイデンティティの関連性を見つめ直すことよって、この説を検証し、アイデンティティはより複雑であるということを示す。方法としては、日本語とスペイン語の両言語においての言語能力に関する量的調査と質的調査を組み合わせ、その結果を分析することにより、実態を浮き彫りにする。
 まず、アイデンティティに関する先行研究を考察し、本研究におけるアイデンティティの定義を明確にする。
 次に、母語とは何か、バイリンガルとは何かについて述べた後、バイリンガルの分類についてと本研究におけるその位置づけを明確にする。
 そして、研究方法を述べ、本研究には2つの調査の詳細とその必要性について述べることにする。また、調査の対象となった児童の「語り」を紹介し、分析をすすめる。
 おわりには、本研究によって明らかになったことを述べる。従来の研究では、エスニックが取り挙げられる説や、言語がしっかりしていることがアイデンティティの確立につながるという説が主流であった。しかし、アイデンティティが形成されるためには母語が1つの大事な要素であるが、決定的な要素ではなく、文化的価値観や他人との関係などの要因もこれに少なからず影響する。したがって、アイデンティティの形成にとって、「母語の習得」という要因だけでは十分ではない。よって、言語だけでなく、心理的なケアなどを含めた、より総合的なサポートの必要性を立証した。

 

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